実力と個性をフレンチスタイルで表現するブランド「ラピエール」
LAPIERRE(ラピエール)というブランドを知っていますか?もしかするとロードバイクユーザーよりマウンテンバイカーのほうがその知名度は高く、評価も高いのではないでしょうか?
そういう自分もマウンテンバイクというイメージを先行してブランドを知っていました。個性的なデザインや機構が多いフルサスマウンテンバイクのなかでも、ラピエールのXRというマシンはかなりの個性をもったマシンでした。
ただ多くのメーカーが乱立する自転車業界のなかで、個性あるデザインだけでは生き残れない。
「洗練されたデザインと個性(革新性)のバランス」
「国際レースでの実績」
「高いブランディング能力」
現代のスポーツバイク業界においてトップブランドである為にはこの3要素が重要と自分は考えました。
「あれ?性能は?」という声が聞こえてきそう。
ラピエールというブランドを語るにおいて、以上の三要素がわかりやすいと考えたが、性能はあまりにも基本的な事であり、それらを維持し続ける開発環境などは、国際レースに関わるブランドであれば基本的な(もしくは当たり前の)条件だと思っています。
基本的な事をクリアした上で、さらに洗練された個性、そして高いプロモーション能力が必要なのではないか。
洗練された個性(革新性)は一流の世界を納得させる事のできるデータという裏付けがあっての事。プロモーション能力は広告という問題だけではない、歴史や伝統、実力と知名度がある選手の在籍、ツールという最高の舞台で戦い続ける事は大きなプロモーションであり、メーカーの意地と誇りでもある。
ただそれだけでもないところにこの世界のさらなる面白みがある。
《目次》
1.「ラピエールというブランド」
2.「なぜ日本ではラピエールの知名度は低いのか?」
3.「ラピエールの性能」
4.「ラピエールの開発能力」
5.「個性的なマウンテンバイク達」
6.「ラピエールデザイン」
7.「まとめ」
1.「ラピエールというブランド」
「TEAM FDJ」シマノ・ヨーロッパとの関係も深い。
「TEAM LAPIERRE GRAVITY REPUBLIC」多彩で強いチームを持つ事は、メーカーとして最も重要な事とも言える。
《ラピエールというブランド》
LAPIERRE(ラピエール)はフランスの老舗ブランドの一つ、その創業は1946年となっている。歴史あるブランドといっても全く差し支えないが日本で知る人は少ない。
もちろん歴史は古くても、現在はギリギリ活動しているブランドというのも多い。だが本国サイトを見てもらえればわかるが、ラピエールのラインナップは非常に多い。スポーツバイク全般からe-BIKE(電動自転車)のラインナップも非常に多い。いや本当に多くて今回調べるにあたって改めて驚いた。
子供車まで作っているのも一つのポイントだが、それらをヨーロッパ中心に年間9万台も販売しているという総合自転車メーカーである。この9万台という数字は驚くべき数字だが、一体そのうちどれほどの数が日本で販売されているのだろうか。
歴史とそれに裏付けされた販売規模、それだけでもトップブランドと言えそうだが、UCIワールドチームである「FDJ」の活動はもはや疑いの余地がないほどの実力と名声を兼ね備えたブランドといっていいはずだ。
そしてマウンテンバイクユーザーのほうがラピエールの実力を高く評価している。「TEAM LAPIERRE GRAVITY REPUBLIC」など、ロードチームと同時に世界レベルのマウンテンバイクチームを持つブランドはそう多くはない。
2.「なぜ日本ではラピエールの知名度は低いのか?」
《なぜ日本ではラピエールの知名度は低いのか?》
知名度がないわけではないが、ではなぜこれほどのブランドが日本ではその実力に反して低い知名度なのだろうか?
この理由に関しては様々な意見があるが、個人的には日本でのブランディングの問題が大きい要素ではないかと感じる事が多い。
冒頭で述べたトップブランド(一流ブランド)である為の3要素をLAPIERRE(ラピエール)がすべてクリアしているわけではない。
国際レースでの戦績は申し分がない。そしてデザインや個性に関しては後ほど説明するが、他にはない魅力をもったブランドである事は間違いない。
ただこれらの事をうまく表現(ブランディング)出来ないと一般ユーザーには伝わらない。その為の伝達手段にはキリがない。国際的なプロモーションが出来ていないと、海を隔てた国々では「どこかの国の個性的なブランド」で終わってしまう。
逆にラピエールほどの規模を持たずとも、日本でより多くの車体を販売し、より多くの認知を得ているブランドは沢山ある。大切な点は「知名度が低い=性能や品質が悪い」ということではないという事だ。むしろ「被らない」という利点があるともいえる。
3.「ラピエールの性能」
「DH WORLD CHAMPION 2017」世界を制したマシンにのみ許されると言ってもいい、アルカンシェルストライプが施されたダウンヒルマシン。
「UCIワールドチームFDJ」のアルノー・デマール
今年「ブエルタ・ア・エスパーニャ」で区間優勝を果たしたアレクサンドル・ジュニエ
《ラピエールの性能》
性能の評価に関しての表現には非常に慎重にならざるをえない。冒頭でも述べたとおり国際レースに参戦するというのは最低限以上の性能がなければ成し得ない。
個人的に思うところだが、このレベルの戦いでの性能差はあくまでトップレベルのエンジンを載せたときにのみ判断出来ると考えている。そしてそのエンジンにはそれぞれに個性があり、車体を捉える感覚が全く違えば、それを表現する言葉もまた違う。
この数値化しづらい性能(さらに言えば、速さだけが性能ではない)は、やはりトップレベルでの戦いにおいて真価が問われる故に、ツールドフランスのような舞台での活躍は、多いに基本的性能の高さの裏付けとなってもいいと考えている。
UCIワールドチーム「FDJ」のアルノー・デマール、アレクサンドル・ジェニエの今シーズンの活躍や、2015年のマウンテンバイク、ダウンヒル世界選手権でのロイク・ブルーニの優勝は、決して性能の低いマシンでは到達できない頂きと言える。
4.「ラピエールの開発能力」
FDJに供給されたTTマシン「Aerostorm DRS」TTマシンの開発能力もまた一つ、そのブランドの総合力の高さを測る事の出来るファクターかもしれない。
《ラピエールの開発能力》
小規模のメーカー、または個人のビルダーでも高いレベルのマシンを作る事が出来る。しかし、多くのマシン、多くのカテゴリー、そして近年のメインマテリアルとなっているカーボン素材には、資金面も含めて高い開発力が必要とされる。
ご存知の方も多いかもしれないが、現在のスポーツバイクの殆どは台湾、中国で生産されている。よってOEMの開発能力が全てという一部の意見もある。ジャイアントやメリダの台頭はそれを表していると言ってもいい。
自分としてはここで初めて冒頭で述べたトップブランドとしての必要な要素が問われると思っている。
「洗練されたデザインと個性(革新性)のバランス」
TTマシンまで作るメーカーというのは多くはない。もちろん付け焼きの類似したデザインを見る事も大手ブランドで見る事もあるが真偽はわからない。だが風洞実験などを行うだけでもそれなりの資金力が問われる。そこで得たデータをもとに、知識と経験をもって、新たなデザインに挑戦し開発する事は、単に「個性的なデザイン」という括りでは収まらない。
少なくても一分一秒に人生をかけ競い合うサポートライダーには、いくらスポンサーとはいえ譲れない部分がある
どういった形状にするか一つをとっても、OEMに任せるわけにはいかない。と同時に、それら開発したマシンを高いレベルで量産するOEMとの関係も重要になる。
5.「個性的なマウンテンバイク達」
個人的にも好きなマシン「XRシリーズ」
個性的なXRのリンク部分
こちらは「XR 629」のリヤサスデザイン
《個性的なマウンテンバイク達》
現在トップブランドとして知られる「キャノンデール」「スペシャライズド」の二つのアメリカンブランドは、最近ロードバイクを始めた方にはご存知ないかもしれないが、どちらもマウンテンバイクの創世記をバックボーンにもつメーカー達だ。
以前、他の記事でもご紹介した
でお伝えしましたが、マウンテンバイクを高いレベルで開発出来るロードバイクブランドは、個人的に高い開発力と柔軟な個性、アイデアを持ったメーカーだと思っている。
かなり個人的な意見になってしまうが、マウンテンバイク、特にフルサスペンションバイクはまだまだ大きく変化をし続けている。トレンドもあるが、今だに自転車のリヤサスには答えが出ていないというのが理由かもしれない
ペダルを踏み込む力と、路面からの振動吸収というのは、逆向きの作用であっても、どちらの性能も活かすことが出来ない相反する自転車特有の課題でもある。
これに対してラピエールはコンピューター制御のリヤサスユニットを搭載してしまったりしている。登りや下りに対してリヤサスを電子生制御するというシステム。じつはこのマシンを2回ほどメンテナンス+組み付けを行った事があるが、日本語取説もなく、海外サイトも情報に乏しく、非常に苦労した経験がある。世間的にもあまり話題になっておらず、説明もないプロモーションはやはりキビシい。だけれども
こういったチャレンジをする姿勢はマウンテンバイクならではの面白さだと思う。写真でも紹介した答えのでないリヤサスに対しての高度なデザインなど、ラピエールにはアメリカンブランドにも負けないチャレンジスピリットを感じる面白いブランドだと思う。
6.「ラピエールデザイン」
美しく個性的なフレンチデザイン「XELIUS SL 600 DISC FDJ MCP」
ピナレロとはまた違った曲線美がここにある
最も特徴的なデザイン「3D TUBULAR TECHNOLOGY」
《ラピエールデザイン》
「AIRCODE」や「PULSIUM」も素晴らしい。しかし現在もっともラピエールらしいデザインを醸しだしていと感じるのが「XELIUS」シリーズ。
特に2017年モデルになってディスクブレーキタイプが加わり、キャリパーブレーキが無くなった事で、特徴的なシートステーとシートチューブが交差するデザインが完成されたように思う。
人によってはこのスタイリングはGTのトリプルトライアングルと言うかもしれない。しかしファーストマウンテンバイクがGTだった自分はGTも好きなブランドだが、微妙に設計思想が違う。
GTの場合は、シートチューブとステーが物理的に交差するようになっている。そうでないタイプがあるかもしれないが、グレードシリーズも同じく、GTのソリッドな加速感はシートチューブが支えている。
それに対してラピエールは、シートチューブとは一切接点がない。近年のカーボン技術が成し得ていた技術だが、シートステー長が長いという事は振動吸収とペダリングの反発力を生み出すバネになる。
このシステムが他の何よりも優れているという事ではない。自転車は常に一長一短を抱えつつ、走るという性能を追求している。個人的にはピナレロにはない曲線美がそこにあり、際立つデザインをうまくまとめあげているセンスが気に入っている。
7.「まとめ」
いかがでしたかラピエール?かなり自由にラピエールというブランドを紹介させて頂きました。以前にSNSでもお伝えした事があるのですが、XELIUSを筆頭に、ラピエールデザインはどことなく英仏開発のコンコルドに似ていると思っています。
多くのメーカーがアジアでのOEM生産になってつまらなくなったとう声をたまに聞きますが、個人的にはそうでない部分もまた別の形で表現されていると感じています。
特にカーボンの成形技術は、自由なフレーム造りを可能とし、以前では未来のコンセプトマシンだったデザインが実現されたり、想像しなかったデザインが表れたりもしていると思っています。
だからって個性があるだけでは生き残れないのが世の中の常であり、スポーツバイク業界に限っても同じことです。確かな知識と経験によって裏付けされた個性は、ちゃんと理にかなったデザインをしていると思っています。
多くのブランドが存在するなかで、ラピエールは実力と個性を、フレンチスタイルとしてうまく表現出来ている魅力的なブランドだと思います。
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