SPECIALIZED S-WORKS(スペシャライズド エスワークス)TARMAC AC15、コンタドール モデル
サイクルパラダイスのスタッフはみんな【バラカン】で組む。そんな一言から始まったこの企画。
2019/11月現在、CYPD動画で2万回再生されるほど反響のあるナカタ氏所有のスペシャルな1台。その完成への道のりには只ならぬ熱意と、アルベルト・コンタドール選手への敬意があった。
“アルベルト・コンタドール”
スペイン出身の元ロードレース選手。2007年のツール・ド・フランスと2008年のジロ・デ・イタリアおよびブエルタ・ア・エスパーニャで総合優勝し、史上5人目となるグランツール完全制覇達成者。
国内販売40台限定のフレームとアルベルト・コンタドール
*スペシャライズドから販売された限定のフレーム
【S-Works Tarmac AC15 Frameset】
2014年ブエルタ・ア・エスパーニャで伝説に残る勝利を挙げた。アルベルト・コンタドールの実績を祝うべくスペシャライズドから販売された限定フレーム。国内では40台のみの販売。この限定フレームのテーマは、3つのグランツールでのリーダージャージと同じカラーを取り入れた「ピストレロ」デザイン。フォークとシートステイにも上品な黒白のカラーテーマが配されている。目を引くデザインに加え、AC’15 フレームセットはレースに臨むロードバイクに期待されるパフォーマンスのすべてを備えている。これはコンタドールがプロツアーに用意された最も急な登り坂や最速の下りを征するのに用いるものと同じである。
(*ナカタ氏のロードバイクはアルベルト・コンタドール選手がレースで使ったフレームのシグネチャー。SIZEタイプも同じで54。TARMACなので、オールラウンドになんでも使えて良いフレームと本人談)
パーツ選びの基本は完全レプリカへのこだわり
パーツ・グレードもコンタドール選手と同じアッセンブル。ただタイヤに関してはS-WORKSターボが通勤には勿体無いないとのことで、パンクに強いコンチネンタルのコンペティション<図1>に履き替えている。(*ナカタ氏の通勤距離はほぼフルマラソンと同じ距離。休憩を入れて2時間ほど)
コンポーネントは機械式のヒモ付きDURA-ACE 9000組み。但し、完全な9000組みではなくクランクはFSAのK-FOECE LIGHT<図2>。ギア比も同じ。パワーメーターはSRMを装着しており、これもコンタドール選手と同じ仕様。ちなみにSRMのクランクパーツは手に入れるのに1番苦労したという。なんでも選手支給のもので一般には販売されていないらしい。ナカタ氏のはチーム支給のものをアメリカで見つけて個人輸入。本人曰く、日本で使ってるの僕一人だけです、とのこと。
またハンドルに装着している白のパワーメーターもSRM<図3>(*パワー/心拍数/高度/エネルギー/速度の測定が可能)。白ボディーに黒文字盤はかなりの種類があり、同じものを見つけるのは結構大変だったらしい。
ちなみに走ったところの記録は残せない。そこで腕時計のGarminフェニックス5<図4>を併用しているとのこと。Garminにはバイクモードがあり、心拍数などのデータをGPSで記録できる。ナカタ氏はデータ採りのため3ヶ月に1回くらいパソコンに記録を移しているそうだ。
ホイールはスペシャライズドのroval CLX40。ただホイールは一昨年の2014年型。2015年モデルにあえて2014年型?と思われるかもしれないが、実際2015年のレースでコンタドール選手が使用していたのは14年型のホイール。コンタドール選手はこれに15年型のステッカーを貼っていた。ナカタ氏のホイールにそのロゴは貼られてはいないが、当然ながら入手済み。白いrovalというそのロゴをホイールの上下に貼れば、レプリカの完成度は99.99%になるという。
ステムとシーポスはコンタドールが所属していたチームの公式で売られていたものを入手。またこれとは別に自作したものもあるのだとか。なんでも本家は赤い下地に蛍光イエローのステッカーを貼り、その上からクリアを吹いているとナカタ氏は写真で気付いたそう。それで、それを真似る形でイエローのシートに黒を印刷し、同じ形に切ってクリアを吹いたのだとか。出来栄えを見てみたいものです。
ハンドルバーに関してはというと、まずティンコフはこの年にスポンサードを受けていたのがFSA。その中でコンタドール選手だけFSAのハンドルは使わずにジップのSL88を使用していた。国内ではあまり流通していないがナカタ氏はこれを入手。さらにスポンサードを受けていないことを理由に、コンタドール選手がジップのロゴをテープで隠していたところも完全に再現している。バーテープはスペシャライズドのホワイト。
さらに驚きなのはアリゲーターI-LINK。アルミの一コマ一コマをつなぎ合わせて作るケーブルなのだが、当時のティンコフのレース高解像度写真をダウンロードして独自に解析。それでコマの数を全部本物通りの再現しているというから驚きです。<図5>
またナカタ氏はティンコフが公開してる高解像度写真からさらに細かい情報を入手。それは実際にコンタドール選手が何ミリ高で乗っているのかを映像から解析したもの。(*シーポス裏側のメモリ)但し、実際のそれよりも15ミリくらい高くしているのだとか。<図6>
<2015年・アルベルト・コンタドール選手仕様の詳細 >
なにもコピーは車体だけじゃない。完璧へのこだわりは他にまで及ぶ・・・
ナカタ氏のこだわりは車体のみに留まらずウェアにまで及ぶ。まず紹介したいのが動画内でも着用されているマリアローズのサイクルジャージ。目を惹く鮮やかなそのピンクカラーは2015年ジロ・デ・イタリアで総合優勝を飾ったコンタドール選手の着用ジャージ。よく見ると右胸にコンタドール選手の直筆サインが入っている。<図7>ただ残念なことにジャージ自体はレプリカ品。
一方でショーツに関しては本物。しかもクライマーにしか支給されないという総メッシュのものというから驚きです。<図8>ただ、このスタイルでの出社はメッセンジャーと勘違いされるからと、ナカタ氏は健気に黒い短パンを履いているのだとか・・・お疲れ様です。しかし身に着けているものをよく見ればグローブやメットにも”tinkoff saxo”の文字が窺える。ナカタ氏が当時のティンコフのメンバーとしてレースに加わっていても、違和感がないほどに完成された出で立ちだと思う。ここまで完璧ならピンクのメットとグラスで色を揃えた姿も見てみたいものです。
ビンディングシューズに至っては本物を真似てワイヤーを交換。<図9>ちなみに販売されているものではワイヤーがシルバー。本物は黒のナイロン系になる。本人曰く、ここまでする人はいない、と笑っていた。しかしその徹底振りには敬意の念しか出てこない。またペダルはルックのチタンシャフトの20。<図10>これも同じものでさらにはトップキャップまで。ほかボトルケージはパックスのカーボンモデル。国内ではなかなか手に入らないそうでドイツから仕入れて購入したとのこと。(*動画ではわかり辛いが実は割れている。ストックはあるが勿体なくて交換していない)
ほんとうはサガンモデルを探してた・・・
そもそもどうしてコンタドールなのか。なぜティンコフなのか。それをナカタ氏に訊いてみたところ、もともとはサガン選手が好きだったとか。そしてその動画を追っていく内に自身の視線は同チームのコンタドール選手へ。やがては彼の動画を追うようになったという。ナカタ氏本人は鞍替えというが、コンタドール選手の登りのスタイル・独特のダウンジングに惚れこみ、素直にコンタドールの方がかっこいいなと、気持ちが移っていったのだった。
“ペテル・サガン”
スロバキア出身のロードレース選手。現在、世界選手権3連覇、史上最多タイとなる6度のマイヨヴェール獲得など生ける伝説として賞賛を浴びる選手。2016年にはドイツのボーラ・ハンスグローエへ移籍した。
それからして、近くの自転車屋に偶然にも54サイズのスペシャライズド エスワークス TARMAC AC15を発見したのだとか。翌日にはキャッシュで購入したというから驚きです。この時は金額うんぬんよりも本人的には買うしかないと決断したそう。ただ運命的な出会いに背中を押されてしまうと、なぜか財布の紐も緩む・・・というか金銭感覚がマヒしていくものです。きっかけは人それぞれですが羨ましい。大事になさってください。
ちなみにナカタ氏曰く、持ってる車体は全部、誰かの選手のコピーだという。だから購入までに至るその判断は”パーツが手に入るかどうか”、ただそうは言ってもなにもかもがコピー品ではない。このコンタドールモデルのスプロケは32T(*コンタドールモデルだと大抵は28T)、SS(ショートケージ)のリアディレイラー。これは自身の勉強として変速の具合をテストしているとのこと。ベテラン整備士として探求心は忘れていないから流石です。
100%の完成まで到達するには・・・
もうやることはないぐらい手が加えられている、それでも強いて言えばコンタドールのステッカー(*スペイン国旗)、同じくプロロゴ(サドル)にもスペイン国旗をつければ100%の完成だと教えてくれた。ここまでに至る道を本人は阿保ですよと笑っていたが、筆者としては感心するばかりです。
最後にもしコンタドールが跨ってもこのまま乗れますか?と訊ねてみたところ、ナカタ氏は「乗れちゃうと思います!」と、満面の笑みでそう返してくれました。